賃貸オフィスにおける火災保険の費用相場はいくら?
火を使うことの少ないオフィスであっても、万が一の時に備えて加入が求められる火災保険。
気になるのは保険料ですが、知識がないと提示された金額が適正であるかどうかの判断は難しいところです。
そこで今回は、火災保険の概要と必要性、賃貸オフィスにおける火災保険料の相場について解説します。
目次
火災保険とは
火災保険とは、建物とその内部にある家具、家財が災害や盗難の被害にあった際、補償する保険です。
従来は名称通り火災だけの被害だけが補償対象でしたが、近年は風水害や落雷などの自然災害や盗難、他の原因で損害を受けた際にも補償される総合補償型保険が主流となっています。
一方、地震や噴火、津波の直接的被害に加え、地震が引き金と成った火災については火災保険の対象外となることを理解しておきましょう。
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賃貸オフィスでも火災保険は必要?
結論から述べると、賃貸オフィスでも火災保険への加入が必要です。
普段から火を使う機会がほとんどないとしても、万が一ビル火災の火元となってしまった時のことを考えてみましょう。
自社の家具や家財を購入し直すことになるのは当然ですが、それに加えて賃貸オフィスの契約者には、ビルオーナーに対する賠償責任、他テナントに対する賠償責任が発生します。
つまり、少なくとも数百万円、ビル全体に被害が及んだとなると億単位の賠償金を支払うことになる可能性があるのです。
一方、火災保険は自社以外が火元となった火災に巻き込まれた場合も、補償対象となります。
何らかの理由で火元側に過失がないと認められた場合、損害は全て自社でカバーしなければなりません。
そうした可能性も踏まえて、火災保険への加入は必須といえるでしょう。
火災保険の構成要素
ひとくちで「火災保険」と言っても、その中身は複数の補償に分けられます。
それぞれ何を補償するものなのか、簡単に知っておきましょう。
➀家財補償
借りている部屋やオフィスの中にある家財に対する補償です。
家具や家電、食器、衣服など生活必需品として「移動させられるもの」が対象で、例えばエアコンや浴槽など建物と一体化しているものは建物の補償に含まれます。
とはいえ、骨董品や宝石など必需品とみなされないものは対象外となるため注意が必要です。
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②借家人賠償責任保険
こちらの過失で、ビルそのものや共有部分に何らかの損害を与えた場合に、ビルオーナーに対する賠償責任を補償する保険です。
火災、破裂・爆発、水ぬれが補償の対象となり、加入しておけば被害の規模に関わらず自己負担がないのが一般的です。
③個人賠償責任特約
こちらの過失で人に怪我を負わせてしまった、人の物を壊してしまったなど、自分の所有物以外に損害が生じた際に補償する保険です。以前は単独の保険として契約が可能でしたが、現在は火災保険など別の保険の特約として付ける形となっています。
火災保険の相場
賃貸オフィスとして契約する場合、基本的には不動産会社やオーナーから提示された火災保険に加入することになるため、保険料がいくらというのは一概には言えません。
また、借りているフロア面積や補償内容によっても保険料は変動します。
ただ、賃貸オフィス向けの火災保険は、一般住宅用の火災保険に比べて保険料が安く、小規模な店舗であれば年間1〜2万円が相場といわれています。
とはいえ、安いからと言って安易に選んでしまうと、いざという時に十分な補償が受けられないというケースもあるため、必ず内容を理解した上で契約しましょう。
災保険の保険料を決める要素
火災保険は全員が同じというわけではなく、さまざまな要素によって金額が異なります。
どのような内容で保険料が変わってくるのか、具体的に見てみましょう。
①建物の構造
火災保険には、住宅の燃えにくさや壊れにくさを表す独自の構造区分があり「構造級別」と呼ばれています。
構造級別は建物の柱や外壁などの素材によって決定し、その区分によって保険料が変わる仕組みとなっています。
簡単に説明すると、構造級別は以下の3つに分けられます。
- M構造:耐火構造の共同住宅(コンクリート造、石造など)
- T構造:耐火構造の独立住宅(コンクリート造、石造など)
- H構造:非耐火構造(木造など)
M構造→T構造→H構造と保険料が高くなりますが、一般的な賃貸オフィスはM構造に該当するでしょう。
②延べ床面積
建物において使用している延べ床面積で、火災保険料に違いが出ます。
面積が広くなるほど評価額が高くなり、火災保険における補償額の上限は、その評価額と同額に設定されるのが一般的です。
実際の面積よりも評価額や補償金額が低いと、その分保険料も安く済ますことができますが、実際に火災が発生した時に十分な補償が受けられなくなるため注意が必要です。
正確な面積を確認した上で、適正金額に設定されているか確認しましょう。
③所在地
賃貸オフィスがある場所、つまり所在地によっても火災保険料が異なります。
例えば、自然災害で考えると北海道や東北地方では雪の被害を受ける可能性が高く、一方の沖縄や九州地方では台風による風水害の被害を受ける可能性が高くなります。
また、都会と田舎であっても建物の密集率の違いにより、火事の被害リスクが大きく異なるでしょう。
こうした条件を全て加味した上で保険料が決定するのです。
④築年数・耐震設計か否か
築年数が古い建物については、1981年6月1日より前に建てられたものかどうかが1つの基準となります。
1981年6月1日に耐久構造基準の見直しが実施され、現在ではそれ以前に建てられた建築物は災害に弱いと評価されています。
そのため、万が一の際は被害が大きいとみなされ、保険料も高くなるのです。
賃貸オフィスを選ぶ際、築年数が古い方が賃料は安く済みますが、こうしたランニングコストも考慮した上で選ぶことが大切です。
⑤補償対象の範囲および特約の有無
一口に「火災保険」と言っても内容はさまざまで、火災や風水害による損害のみを補償するもの、床上浸水などの水災をカバーするものなど、補償範囲は自分でカスタマイズすることが可能です。
また、近年は地震や噴火、それに伴う津波による被害まで補償される地震保険を併用する人が増えています。
これは地震が起きた際、そこに起因する火災が発生して損害が出たとしても、火災保険では補償されないためです。
当然、補償内容を充実させればさせるほど保険料も高くなりますが、万が一の時に備えて、十分な補償を受けられる状況を作っておくことが大切です。
賃貸オフィスだからこそ補償内容の充実した火災保険に加入しよう
いかがでしたでしょうか。
この記事を読んでいただくことで、賃貸オフィスにおける火災保険の必要性や火災保険料の概要についてご理解いただけたと思います。
賃貸には火災保険なんて必要ないと思いがちですが、万が一の補償金額のことを考えると、賃貸だからこそ加入が必要だと言えます。
相場は1〜2万円が相場ですが、条件によって異なるため、補償内容をしっかりと確認した上で契約することが大切です。