テナントオフィスのメリット・デメリットとは?他のオフィススタイルと徹底比較
オフィスを賃貸で利用する際に、最初に思い浮かぶ物件が「テナントオフィス」です。テナント物件は、店舗だけでなくオフィスとしても利用価値が高くさまざまなメリットを持ちます。
今回は、テナントオフィスの利用を考えている方に向けて、テナントオフィスのメリット・デメリットをご紹介します。テナント以外のオフィス物件と比較して、自社に適したオフィススタイルを理解しましょう。
目次
テナントとは
テナントとは、建物やビルの一区画を借りる人または場所そのものを指します。テナントビルと聞くと、多くの方が飲食店やアパレル、美容院が集結した商業施設を思い浮かべますが、テナントの活用法はそれだけではありません。
ここからは、用途に合わせたテナントを3種類ご紹介します。
テナント
- 店舗
- オフィス
- 倉庫
店舗
テナントを店舗として利用するケースです。
店舗とは、飲食店や美容院、アパレルショップなど不特定多数の来客を見込んだ物件のこと。集客率を高めて店舗経営を安定させるためには、立地条件が肝となります。
駅のロータリーや商店街など、人通りの多い場所に面しているかどうかが集客率に繋がるでしょう。
ただし、好立地であるほど賃料は高くなる傾向にあるため、予算と相談し条件に見合ったテナント物件を見極めることが大切です。
オフィス
企業が事務作業を行うオフィスとしてテナントを利用するケースです。
オフィスは、店舗のように不特定多数の来客を想定しておらず、直接的なサービスや商取引は行われません。基本的に社員のみが出入りするため、働きやすく快適に利用できる環境が備わっていることが求められます。
駅からの近さや治安の良し悪しなど、周辺環境の良さが好まれるでしょう。
倉庫
商品在庫や備品を保管するための倉庫として、テナントを利用するケースもあります。
テナント倉庫は、余った商品在庫や事務所に置ききれない備品などを保管するために利用されます。オフィスや店舗が同じ建物内にあり、保管スペースとして在庫を持ちやすいメリットが挙げられます。
また、同じ建物に複数のテナントを借りることで、賃料の交渉もしやすくなるでしょう。
倉庫として利用する場合、設備や内装を重要視しないため比較的どのような建物でも自由に選べます。
テナントはオフィスとして利用できる?
テナントをオフィスとして利用することは、もちろん可能です。
しかし、建物のオーナーがどのような用途で部屋を募集しているかの確認は必要です。もし飲食店やアパレルなどの商業施設としてテナント募集を行っていたら、オフィスとして利用することは難しいでしょう。
とは言え、建物オーナーにとって、テナントオフィスがメリットの大きい不動産資産であることは間違いありません。
オフィスは、店舗と違って退去リスクが少なく長期的な入居が見込めるため、オーナーとしても安定的な収益が期待できるのでしょう。
テナント募集している物件がオフィスとして利用できるのか気になる場合は、一度募集している管理会社へ確認してみると良いでしょう。
テナント以外で選べるオフィスのスタイル
近年はリモートワークを推奨する傾向が高まり、事務所を構えない企業が増えつつあります。オフィスで働くか自宅で働くか、仕事場所を選べる時代になってきました。
テナント以外でのオフィスとは、具体的にどういうものがあるのでしょうか?ここでは、代表的なオフィスのスタイルをご紹介します。
オフィスのスタイル
- 自社物件
- シェアオフィス
- コワーキングスペース
- バーチャルオフィス
自社物件
一つ目は、自社で物件を所有してオフィスを構える自社物件です。資本金に余裕のある企業や大手企業に多いケースです。
自社物件を持っている場合、テナントオフィスのように賃貸料を支払う必要がないため定期的な費用が発生しません。自社で建物自体を所有しているので、オーナーからの賃上げ交渉の心配もなく、総合的な支出が少ないメリットがあります。
ただし、建物の修繕費や固定資産税などの費用や、初期投資費用が大きく、コスト面での負担が大きいというデメリットが挙げられます。移転時の売却手続きに手間や費用がかかることも。
シェアオフィス
次に、複数の企業と一室を共同で使用するシェアオフィスがあります。
シェアオフィスとは、自社専用の業務スペースと、他の法人企業と共有するフリースペースが設けられたオフィススタイル。会議室や休憩室などをフリースペースとしてシェアします。利用度の低い部屋にかけるコストを抑えられるメリットがあります。
一方で、複数の企業と共同で一つのスペースを利用するため、内装や備品などを自由に選べないデメリットも。また、フリースペースが混み合う時間帯は、思うようにオフィスを利用できないことがストレスになってしまうかもしれません。
関連記事:シェアオフィスとは? メリットとデメリット・選び方を徹底解説
コワーキングスペース
シェアオフィスと似た形態で、コワーキングスペースを設ける企業も増えています。
コワーキングスペースとは、その名の通り、他の法人企業と一室を共有して仕事を行います。シェアオフィスと違い、自社占有スペースがありません。
初期費用や契約金などを安く抑えられて、自由度の高い働き方ができます。
しかし、不特定多数の人と同じ空間で仕事をするため、情報漏洩のリスクも懸念されます。プライバシー面が気になるという場合はおすすめできません。
バーチャルオフィス
最後に、オフィスとしての場所を持たないバーチャルオフィスをご紹介します。
バーチャルオフィスとは実際のオフィスを構えず、事業用の住所を貸し出すオフィスサービスのこと。多くの場合、法人登記を目的として利用されます。
電話やFAXなどの通信回線を引いて受付の対応をしたり、郵便物の受け取りをしてくれたりと、オフィスとしての機能を果たしてくれます。
コストや事務所を借りる手間を省けるため、フリーランスや少人数規模の企業に適したサービスですが、そもそも開業要件を満たさない場合もあるので注意が必要です。
テナントをオフィスとして利用するメリット
企業の規模や用途に合わせて、さまざまなオフィスのスタイルを選べることがわかりました。そんな自由な時代において、テナントオフィスを利用するメリットとは何なのでしょうか?
テナントオフィスを利用するメリットを4つご紹介します。
メリット
- 必要なスペースを確保できる
- レイアウトを自由に考えられる
- 固定資産を抱えなくてよい
- 自由度が高い
メリット①必要なスペースを確保できる
テナントであれば、自社スペースを確保した物件を探すことができます。従業員一人ひとりが業務を行う場所や休憩室、応接室など企業にとって必要な専有スペースを持てます。
仮に、他の企業と空間を共有したり、一つの部屋を共同で使用したりするオフィススタイルの場合はそうもいきません。
働くための十分なスペースを確保できず、窮屈な想いを自分だけでなく社員にまで負わせてしまいます。社員一人ひとりが十分働けるようなスペースを確保し、ストレスなく業務を行うためには、テナント物件がおすすめです。
メリット②レイアウトを自由に考えられる
テナント物件は、法律や構造上の規律はありますが、ある程度自由にレイアウト変更することが可能です。
レイアウトは、社風に合ったデザインや、業務を行いやすい効率的な動線づくりも欠かせませんが、社員のニーズを反映させることも大切です。
社員が、どのような不満や要望を持っているのかをヒアリングして、レイアウトに取り入れましょう。
社員が快適に過ごしやすい環境で働けるようなレイアウトが望ましいです。
メリット③固定資産を抱えなくてよい
自社物件のように固定資産税を抱える心配がありません。
固定資産税とは、所有している土地や建物、工場の機械などにかかる税金のことです。
テナント物件の場合、スペースを借りているだけで所有していないため、固定資産税のような課税費用を支払う必要がなく、コストの削減に繋がります。
自社で建物を所有していると固定資産税だけでなく、建物の修繕費や管理費、さらに莫大な初期投資費用がかかります。テナントオフィスはコスト面からみても、ハードルの低い物件といえるでしょう。
関連記事:テナントの賃料相場っていくら?賃料の決め方と内装工事費を抑える方法
メリット④自由度が高い
オフィスを移転する場合でも、テナント物件であれば解約手続きだけで処理が済みます。
これが自社物件の場合だと、建物を売却するのか、誰かに貸し出しするのかなど手続きが面倒くさく複雑です。スムーズに退去、移転へ進まない可能性があります。
テナントオフィスであれば、基本的に6ヵ月前から解約予告通知を提出すれば退去できるので、煩雑な手続きに頭を抱える心配もありません。
テナントをオフィスとして利用するデメリット
テナントオフィスは、賃貸だからこそのデメリットもあります。ここでは、テナントオフィスを利用するデメリットを3つご紹介します。
デメリット
- 初期費用が高い
- 改装に制約がかかる可能性がある
- 原状回復に費用がかかる
デメリット①初期費用が高い
賃貸物件だからこそ支払う必要のある初期費用があります。具体的には以下の費用です。
初期費用
- 敷金・礼金
- 保証金
- 前家賃
- 仲介手数料
- 保険料
初期費用は、一般的に家賃の3〜15ヵ月分といわれています。保証金は滞納した場合に補うための保険的な役割をもちますが、賃料の10ヵ月分が相場です。初期費用としてはかなり高額になります。
初期費用を少しでも抑えたい場合は、契約前に条件を交渉するようにしましょう。
デメリット②改装に制約がかかる可能性がある
テナントオフィスは、自社スペースを確保できることからある程度自由にレイアウトを変更し、内装を楽しむメリットがあります。
ただし、法律や建物の構造上の規律であったり、建物オーナーの意向にそぐわない場合は、改装に制約がかかってしまうことも。
自由にレイアウトを選べない可能性があります。
デメリット③原状回復に費用がかかる
オフィスを退去するとき、引き払って終了ではありません。契約内容に基づき、入居していた初期状態に戻して返還する義務があります。
原状回復を行う範囲は、賃貸マンションと異なり厳しく定義されているテナント物件が多いです。
具体的には、以下の作業などが挙げられます。
原状回復が必要な範囲
- カーペットや壁紙、クロスの張り替え
- 間仕切りやパーテーションの撤去
- デスクや椅子、会社備品の撤去
入居時にレイアウトを大きく変更し改装工事を重ねている場合は、原状に戻すための工事費用が高額になる可能性も。
テナントオフィスのメリットを最大限に活かそう
いかがでしたでしょうか。
今回は、テナント物件をオフィスとして利用するメリット・デメリットを解説しました。テナントをオフィスとして利用することは可能です。テナント物件は、予算やレイアウト、専有スペースなどに幅を持たせやすく、自社の条件に適したテナントを見つけやすいメリットがあります。
テナント物件だからこその利点を活用して、周辺環境や利便性に優れたテナントオフィスを探しましょう。